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外壁のシーリング(コーキング)とは?補修方法や注意点を解説
日本では、約9割の家屋に外壁材としてサイディングが採用されています。サイディングの種類はさまざまで、窯業系(セメントが主原料)や金属系などがあります。これらは工場で生産され、多くは幅500mm×長さ3,000mm程度の大きさの1枚のボードに仕上げられ、現場で外壁として貼られていきます。複数のボードを貼り合わせて外壁にするため、必ずサイディングボード同士の継ぎ目(目地)ができます。継ぎ目部分から雨水等を侵入させないために用いられるのがシーリング材です。コーキング材という呼び方もありますが、基本的にはどちらも同じものを指します。
本記事では、年数の経ったシーリングの補修方法や打ち替えのタイミング、注意点などを解説します。お住まいのシーリングのひび割れなどが気になっている方は、ぜひ参考になさってください。
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シーリング(コーキング)とは、サイディングやALCパネルのような外壁材の継ぎ目を埋めるために充填されるペースト状の建材です。外壁以外にも、サッシ・玄関ドア周り、室内のキッチン・浴室・洗面所などの水周りの目地を埋め、防水性を高めるために使われます。目地に充填すると徐々に硬化していき、弾性を保った状態でその機能を発揮します。
外壁のシーリングの主な役割は下記の2点です。
通常、サイディングボードやALCパネルなどには、等間隔で1~2㎝幅の目地部分があります。この目地部分を設けることで、隙間に充填したシーリング材が緩衝材としての役割を発揮し、外壁材同士がぶつかることを防いでいるのです。そのため、シーリング材には柔軟性が求められます。
なぜ目地はあるの?
主に、温度や湿度による伸縮や歪みを調整し、地震の揺れなどによる破損を防ぐためです。
写真のように、目地があることで寒暖の際の伸縮や地震の際の揺れによる外壁材の破損を防いでいます。
サイディングは、大抵、幅500mm×長さ3,000mm程度の大きさの1枚のボードに仕上げられています。技術的にこれより大きいサイズのボードを作るのが難しいわけではなく、運搬や施工時の便宜を考慮してこの大きさが一般的になっています。これより大きくなると運びにくく、施工が難しくなります。
ALC(autoclaved lightweight aerated concrete)とは
ALCとは、Autoclaved Lightweight aerated Concreteの略で、軽量気泡コンクリートを指します。ALCの最大の特徴は、「多孔質=無数の空気穴がある状態」であることで、本来であれば重さのあるコンクリートに気泡を入れることで軽量化を実現し、外壁材として使用されています。
ALCは多孔質であるため、定期的に適切な塗装メンテナンスを行う必要があります。
では、目地のない外壁材にすれば目地の劣化を気にする必要はないのでしょうか。繋ぎ目のない外壁としてモルタルがありますが、モルタルにもデメリットはあります。最大のデメリットはひび割れです。ひび割れができてしまうと、雨水が浸透しやすくなるため、シーリング材による補修が必要となるのです。モルタル外壁はデザイン性に優れ、継ぎ目がないため綺麗に仕上がるのがメリットですが、工程が複雑で手間が掛かり、コストが高くなることから、近年では施工数が減少しています。
また、モルタルのお住まいであっても、サッシや玄関周りにはシーリングが必要です。
冒頭にも触れたように、シーリング材はコーキング材という呼び方をされることもあります。かつては使用用途が違っていましたが、現在は、どちらも目地や隙間を埋める充填剤として同じ建材を指します。
シーリング材(コーキング材)は、使用用途によって使用する種類が異なります。用途を間違えて使用してしまうと、本来の機能を発揮できませんので、注意が必要です。ホームセンターなどで売っているシーリング材を購入して、ご自身で補修を行う際には、どの場所に、どのシーリング材を使うべきなのか、予め確認した上で使用されることをオススメします。
下の図にあるように、シーリング材の種類は、大きく1液型と2液型に分かれます。1液型は主剤だけで使用するタイプで、2液型は主剤と硬化剤の樹脂を混ぜ合わせたタイプです。2液型は乾くのが早くて扱いにくいため、使い方に慣れた職人でなければ困難でしょう。また、現場で混ぜ合わせてその日のうちに使わなければならないので、余分が出ると無駄になってしまいます。
種類はさらに、アクリル系・ウレタン系・変性シリコン系・シリコン系に分かれます。外壁に使用されるのは、ウレタン系か変性シリコン系です。下の図の4種類の特性を簡単にご説明しましょう。
アクリル系は、水性タイプで作業性に優れ、比較的安価ですが、その分耐候性・耐久性はやや遅れをとります。耐久性を持たせたいメンテナンスには不向きと言えます。
ウレタン系は、耐久性が高いのが特徴です。弾力性を持つので、外壁の目地やひび割れ補修にもよく使われます。
変性シリコン系は、耐候性に優れています。ウレタンが主原料で、硬化した後に塗装ができるため、外壁の目地に使われます。
シリコン系は、耐水性・耐熱性に優れ、価格も比較的安価です。主に室内のガラス・キッチン・浴室・洗面台などの目地に使用されます。
サイディングの張り方には縦張りと横張りがあります。単なるデザインの違いと思われるかもしれませんが、実は目地の多さやメンテナンスなどにも影響がありますので、確認していきましょう。
※図はニチハ株式会社、設計施工資料PDFデータ、設計施工資料集:モエン標準施工編 2019年版より参照
サイディングの縦張り
縦張りとは、縦向きにサイディングを張り付ける工法です。この場合、胴縁(下地となる木材)と目地は横向きになります。雨が流れやすくシーリングが少ないのが特徴です。メンテナンスの際も施工箇所を少なくできるためコストパフォーマンスを考慮してもメリットがあります。また、縦向きの外壁材は目地の必要のないタイプもあります。
サイディングの横張り
横張りとは、横向きにサイディングを張り付ける工法です。この場合、胴縁と目地は縦向きになります。サイディングの多くは横張りタイプが多く、人気があります。また、縦張りよりも強度が高く、施工も容易にできるのが特徴です。ただ、縦張りに比べると雨水が溜まりやすく、シーリングが多いのがデメリットと言えます。メンテナンスの際に手間が掛かることも気になるところです。
ALCパネルは、一般的にサイディングよりも小さいサイズの設計になっているため、縦・横どちらともシーリング施工しているケースが多く見られます。シーリングの施工範囲は、下の図のように、縦張りが一番少なく、ALCが多くなります。シーリングの打ち替えメンテナンスも念頭に置いて、新築や外壁の張り替えメンテナンスを検討される際の参考になさってください。
また、外壁には目地がなくても、サッシや玄関周りには必ずシーリングが施工されていますので、補修メンテナンスを忘れずに行うようにしましょう。
シーリング材にも耐用年数があります。一般的な外壁材は10年程度で塗装メンテナンスの時期を迎えます。しかし、シーリングの場合、お住まいの立地条件や気候条件など環境によっては、施工から3年程度経過すると劣化が始まる場合があります。
シーリング材は、紫外線や風雨・温度変化の影響を受けながら徐々に劣化が進んでいくのです。
シーリング材は外壁材よりも先に耐用年数を迎えます。たとえ、必要なメンテナンスがシーリングの打ち替えだけであっても、足場仮設が必要になり、足場代がかかってしまうので、外壁材とシーリング材のメンテナンスはできるだけ同時に行うことをオススメします。
シーリング材の中には、15年を超える耐用年数を有するタイプもあります。外壁材と同時にメンテナンスを行う際には、外壁材とシーリング材の耐用年数が同程度のものを選ぶと、次のメンテナンス時期を合わせられるでしょう。
シーリングの補修に足場仮設は必要?
一部の補修を除き、足場仮設は必要です。
お住まい全体のシーリング材を打ち替える場合、外壁同様、高所作業となりますので、足場仮設は必要になります。そのため、足場コストを考慮すると、外壁材とシーリングのメンテナンスは同時に行うと良いでしょう。さらに言えることは、屋根材のメンテナンスにも足場は必要ですので、屋根・外壁・シーリングのメンテナンスは同時に行うことが理想的と言えます。
横目地の場合…
上の写真のとおり、サイディングが縦張りの場合には、目地は横目地になります。横目地は雨水が横に走ってしまうため、一見、部分的な補修で良いと思えても、劣化が複数箇所に及んでいることもあります。
→3mほど高い場所にあるシーリングをまとめて補修するには足場が必要不可欠です。
縦目地の場合…
上の写真のとおり、サイディングが横張りの場合には、目地は縦目地になります。縦目地の場合、高所の脚立作業は危険が伴います。安定した足場がないと綺麗な施工はできないため、足場仮設は必須になります。
外壁材同様、シーリング材も、紫外線・風雨・温度差の影響を受け、劣化が進みます。シーリング材が劣化すると、柔軟性(弾性)が失われ、ひび割れや剥離などの現象が起きるのです。
シーリング材には、柔軟性を持たせるための可塑剤が含まれています。劣化した状態のシーリング材は表層に可塑剤が染み出して黒ずんでしまいます。こうなると、美観を損ねるだけでなく、シーリング材としての機能を保てなくなりますので、打ち替えが必要となるのです。
身近なところでご説明すると、輪ゴムやクッションフロアなどに可塑剤は使われています。古く、柔軟性が失われた輪ゴムが切れてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。長年放置していた輪ゴムにベタつきが生じるのは、可塑剤が染み出している証拠です。
可塑剤とは、シーリング材・ゴム製品・硬い樹脂・弾性塗料などに柔軟性を持たせる目的で添加される液剤です。シーリング材に混ぜられる可塑剤は、太陽光や温度変化、経年劣化などにより、徐々に表面に染み出してきます。これはブリード現象と呼ばれ、黒ずみとなって外壁材にまで広がってしまいます。この問題を解決するために、可塑剤が含まれていないシーリング材も開発されています。オート化学工業の「オートンイクシード」というシーリング材は、独自の特殊高耐久ポリマーを配合することにより、可塑剤を使用せずに柔軟性・耐久性・耐候性を実現した製品です。
シーリングの打ち替えは自分でできる?
業者に依頼しましょう!
シーリング打ち替えは以下のように進めていきます。
シーリングの打ち替えをご自身で綺麗に行うのかなり難易度が高くなります。シーリング材を撤去した後に行う養生は、シーリング材が外壁材にはみ出さないように、目地に沿ってマスキングテープを貼る作業を言います。実は、この作業を確実に行うには、かなりのコツが必要です。本当に平坦な外壁は少なく、ほとんどの外壁には凹凸が存在するため、慣れない人間が作業すると、隙間ができてしまったり、テープを剥がす際に外壁を汚してしまう等の失敗が良くあります。
シーリングの打ち替えだけでもいいの?
シーリングの劣化が気になる場合は、それでも良いでしょう。
ご予算の都合等から、シーリングの補修工事だけをご用命いただくこともよくあります。
ただし、前述したようにシーリングの補修工事にも足場は必要です。それなりのコストがかかる足場を設置してシーリングの補修しか行わないのは少々もったいないと言えるでしょう。一般的な30坪程度の家屋の場合、足場仮設費用は概ね15~20万円程度と言われています。シーリングの打ち替えから何年か経過すると今度は外壁のメンテナンスの時期を迎え、その際にも足場仮設をしなければなりません。ですから、外壁とシーリングは同時にメンテナンスすることをオススメします。さらに、屋根のメンテナンスも同時に行えば、足場仮設のコストを節約できるでしょう。
打ち替え
既存のシーリング材を撤去し、新しいシーリング材を充填する補修方法。
増し打ち
既存のシーリング材の上からシーリング材を充填する補修方法。
打ち替えができない場所を除き、基本的にはシーリングは打ち替えをオススメします。
ただし、窓やドアなどのサッシ周りは、打ち替えができない場合があるため、増し打ちが適しています。打ち替えの際には、古くなったシーリング材をカッターで削り取って撤去していきます。この際、防水シートなどを傷つける恐れがあるため、サッシ周りの打ち替えは避けられているのです。サッシ周りのシーリングの増し打ちは、劣化が進む前に早めに行うようにしましょう。
外壁のシーリングは増し打ちでもいい?
増し打ちの場合、古いシーリング材と馴染まずに剥がれることもあります。
劣化したシーリング材は硬くなっているため、増し打ちの場合、新しいシーリング材と馴染まずに剥がれてしまうことがあります。一見、綺麗に仕上がったと思えても、すぐに剥離してしまうようでは、シーリング材を充填する意味がありません。ですから、避けられない場合を除いて、増し打ちによる補修はオススメできません。
外壁のシーリングは打ち替えをオススメします。サッシ周りは陽の当らない場合が多く、日が当たる場所に比べて劣化のスピードが緩やかであるため、増し打ちでも問題ありません。
私たち「街の外壁塗装屋さん」では、無料の点検を承っております。シーリング部分に不安をお持ちの方やメンテナンスをお考えの方は、是非ともお気軽にご相談ください。
先打ちとは、外壁塗装前に打ち替えを行うことを言います。外壁塗装の時にシーリング材にも塗装するのが後打ちとは違う点です。塗膜が紫外線や風雨による劣化を抑えてくれます。
後打ちとは、外壁塗装後に打ち替えを行うことです。表面に塗膜がないため、ひび割れの心配はありませんが、劣化が早い傾向にあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、先打ちと後打ちにどちらが正解ということはありません。施工方法よりも、オート化学工業「オートンイクシード」等の高耐久・長寿命のシーリング材を採用することが大事です。
ワーキングジョイントとノンワーキングジョイントの違い
シーリングには、ワーキングジョイントとノンワーキングジョイントという2種類の接着方法があります。ここでは、その違いについて簡単にご説明しましょう。
サイディングの場合、シーリングの役割は気温差による伸縮や地震などの外壁材の揺れに応じて動き、サイディング同士を破損させないことです。このように動くことを前提としてシーリング材を接着させる方法をワーキングジョイントと言います。ワーキングジョイントの場合は、下の図にあるように、2面接着にして伸縮や揺れの動きを制限せず、シーリング自体のひび割れを抑えることが可能です。
ワーキングジョイントは2面接着
ノンワーキングジョイントは3面接着
2面接着には、バックアップ材を使う方法とボンドブレーカーを使う方法があります。両者とも、底面にシーリング材が届かないため、3面接着を防ぐことができます。バックアップ材を使う方法は、発泡スチロール製など、シーリング材と接着しにくい建材を底面とシーリングの間に挿入して底面の接着を防ぎ、ボンドブレーカーは、特殊なテープを底面に貼りつけてシーリング材の接着を防ぐものです。
一方、ノンワーキングジョイントは、鉄筋コンクリート造りなどの動かない外壁のシーリングとして採用され、3面接着となります。
このように、外壁材の種類や場所によってシーリング材の接着方法にも違いがあるのです。シーリング材の使い方を間違うと、ひび割れや剥がれが起こりやすくなるため、使い分けがしっかりとできる施工業者を選ぶようにしましょう。
ここからは、窯業系サイディングのシーリング打ち替え方法と施工工程を、施工事例とともに確認しましょう。今回は先打ちの事例です。
まずは、シーリング材の点検を目視で入念に行います。
上の写真のように、全体的に、ひび割れや可塑剤が表面に染み出して黒ずんでいる箇所が確認されました。この状態では、増し打ちはおすすめできないため、打ち替えをご提案させていただきました。
古いシーリング材にカッターで切り込みを入れ、剥がしながら撤去していきます。劣化が進行し過ぎているとボロボロになり、撤去に手間が掛かります。工期やコストにも影響する場合がありますので、注意が必要です。
既存のシーリング材は丁寧にしっかりと取り除かなければなりません。残ったままでは、新しいシーリング材の接着力が落ちてしまいます。この撤去作業は、綺麗に仕上げるためには重要な工程となります。
次に、シーリング打ち替え工程に進みます。窯業系サイディングの接着方法はワーキングジョイントです。サイディングとシーリング材の密着性を高めるために、先にプライマーを塗布します。
プライマーの次にシーリング材を充填していきます。窯業系サイディングは2面接着となるため、目地の幅に合ったバックアップ材を先に埋めます。これで、底面にシーリング材が触れることはありません。
シーリング材を充填したら、専用のヘラを使って押し込みながら表面を均していきます。この作業を丁寧に行うことで、側面への密着度を上げることができるのです。
シーリング材はペースト状ですが、空気に触れると硬化が始まり、ゴムのような弾力性を持ちます。表面の硬化、つまり、表面が乾燥するまでには1時間ほど掛かりますので、表面を均した直後ではなく、ある程度固まってから養生テープを剥がします。また、完全に硬化してからでは、養生テープがきれいに剥がれなくなりますので、半乾き程度が目安となります。
今回は、外壁塗装を行う前の先打ちでのシーリング工事が完了しました。この後、外壁塗装工程に進みます。
外壁のシーリング(コーキング)とは?補修方法や注意点を解説まとめ
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